新耳袋の心得


古来よりいちどきに百の怪奇な話をすると、怪異なことが起こるとされている。これが"百物語"である。
その昔、大奥の女たちの間で"百物語"がはやったが、あまりに血なまぐさい怪異が続いたため、やがて"百物語"は廃れたのだという。
本書はそういった遠い昔の怪談ではなく、この現代に起こった"百"怪異を収録したものである。基本的には一切の究明、解釈を求めず、ただ起こった現象を記しただけのものである。
そして、われわれの取材がなければ体験者自身もたんなる錯覚と片付け、記憶の底に沈めてしまうような、唐突で意味不明の不思議な出来事も、あえて多く収録してある(そのため、これらをいわゆる"超常現象"の研究対象とするには、あまりに偶発性が強く、不適当であろう)。
場所そのものがキーポイントにならない限り、地名も人物名も伏せてあるが、それは、その怪異があなたのすぐそばにある現象だからである。
この記録を一晩で完読すれば、あなたは"百物語"を体験することになる。
その時起きるかもしれない怪異現象を記憶に焼き付けて、あなただけの百物語を完結していただきたい。


単行本『新耳袋』より


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