見捨てられた


Wさんという若者がいた。
彼は、いわゆる"暴走族"だった。
無茶というか無謀なバイクの運転を繰り返しては次々と事故を起こした。
普通なら即死間違いなしという大事故にも何度か遭った。ところがその度に彼だけが無傷か、軽い怪我で済んだ。
ある時などは、パトカーの追跡を振り切ろうと全速を出していて、何かに激突して、三回バウンドして道路にたたきつけられた。バイクはぐしゃぐしゃの全壊。でも本人はピンピンしていた。
あいつは不死身やと仲間内では有名だった。

ところがある時Wさんが「俺、なんか見捨てられたみたいや」と親しい仲間にポツリと漏らしたという。
「見捨てられたって?」
「俺を守ってくれてた人や。お前、もうええかげんにせえって……」
それ以上は言わなかった。

三日後、Wさんは小さなバイク事故で死んだ。

(第九話 66話)


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