古人形


Iさんが福島県にある実家の兄から電話をもらった。
蔵の大掃除をするので手伝いに来い、という。
往復だけでも大変なのに、肉体労働をやらされてはかなわないと思ったが、気にいったものがあったら持って帰ってもいい、という言葉につられて実家に帰った。
蔵の物を一度全部出してみようということで、ふたりで次々と表へ出した。
しばらくすると、蔵の奥から兄が桐の箱を持って出てきた。
これなんだろう? と言う。
開けてみると、箱一杯の大きさの、着物を着た男の子の人形が入っている。
兄の顔が、どうする? と聞いている。
Iさんにもどうしていいかわからないので黙っていると、燃やすか? とひとこと兄が言った。

その途端、蔵の二階から、子供がドタドタドタドタと走り回る音が聞こえ出した。
Iさんの実家には子供はいない。
「燃やすのは良くないよ」と咄嗟に言うと、ピタと足音が止まった。
蔵を見つめていた兄は、じゃあどうする? という顔をする。
どうしよう……。
すると兄が、埋めようか? と言った。
途端に、蔵の二階から、子供がドタドタドタドタと走り回る音がする。
「埋めるのは良くないよ」と言うと、ピタと足音が止まった。
兄はまたこちらを見て、じゃあどうする? という顔をする。
どうしよう……。
すると兄が、そうだ、檀家のお寺に引き取ってもらおう、と言った。
思わずふたりで蔵を見たが、今度は子供の走り回る音は聞こえなかった。
どうやらそれがいいらしい。Iさんの車に乗って檀家の住職を訪ねた。
住職はその箱を見た途端に顔を曇らせて、「えらい物を持って来たのぉ」とひと言いうと、中身を見ることもなく箱を受け取って本堂の方に歩いて行ってしまった。

(第十夜 61話)


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