「妖怪 件〜くだん〜 発見」
2004/09/11

Loading...

まずご覧いれましょう。これが40年の眠りから目覚めた件です。

今回はいつもの怪談と違って少し趣を変えて私のフィールドワークのレポートをお送りしたいと思います。
去る8月の19日、群馬県は沼田と言う所で件の剥製をついに発見いたしました。
件とは、関西地方で流布されている妖怪の一種です。顔が人間で体が牛という姿をしています。内田百閧フ短編小説「件」や小松左京さんの小説「くだんのはは」に登場する妖怪として知られています。
件は親牛から生まれた時に予言をして2、3日後には死ぬと言われている予言妖怪です。
それ故に世の中が乱れる時生れ落ちては重要な予言をする形で、流言飛語の発信地とされています。その予言は外れる事無く、間違いなく正しい事を伝えるという意味から証文などの最後に「よって件の如し」。つまり件が言うように言葉に嘘はありません、という意味で使われています。
さてこの件ですが、これまで絵葉書などの写真で紹介されたことや、剥製として見世物にされていたという記録は残されていますが、その実物が確認されたことはありませんでした。かつて水木しげる大先生が大分県別府八万地獄で件の剥製をご覧になったことがあるらしいですが、その後古くなりすぎた為に燃やされたままになっていました。
ところで私は『新耳袋』第一夜(メディアファクトリー・角川文庫刊)にも書きましたが、中学一年生の頃からこの件の姿を現在まで31年間追い続けて来ました。その努力というより執念深さが実を結んで、この度実物の、しかもこれまで絵葉書などで未発表であった別の固体を発見しました。
驚いたことに、関西では縁起物の妖怪として扱われていましたが、発見された場所が以外にも群馬県であったのみならず、全くの因果興業として見世物とされていてその名も件ではなく「牛人間」として興業されていたということが解りました。それと同時に興業に使用された絵物語(紙芝居と同じもの)のスライド全53枚も同時に発見しました。この発見によって一つの固体が関東と関西では全く正反対の興業形態で、見世物にされていたということが解りました。
何よりも今から40年前に桐の箱の中に封印されたままになっていたので、極めて良好な保存状態で発見出来ました。その桐の箱と同時に保存されていた6ミリのオープンリールの音源も発見されたのですが、残念ながら興業の音声ではありませんでした。
しかしながらその音源には1964年の東京オリンピックのニュースが吹き込まれており、発見されたその時期が40年後のアテネオリンピックの開催中であったということは、奇妙な偶然と言うほかありません。しかも両オリンピック共、日本にとってはゴールドラッシュに沸いた大会でしたから、発見者の私にとってはまるで件のお陰に思えてなりません。
しかも発見された翌々日は、川崎市民ミュージアムで開かれていた「日本の幻獣」〜未確認生物出現録〜の民俗学者のフォーラムの開かれていたため、この会場に発見されたばかりの件を持ち込んで京極夏彦さんや小松和彦先生など民俗学者の先生方に実物を見ていただくという幸運とも重なりました。誠に数奇な運命に他なりません。
詳しい発見レポートは10月2日発売の妖怪専門誌『怪』(角川書店刊)巻頭カラーで緊急特集されますので、こちらをご覧になって頂ければ助かります。


| |



「裏耳袋」へ

サイトトップへ